MOONLIGHT
特別病棟の最上階。
ワンフロアに1部屋だけの貴賓室。
「戸田さーん、昼飯ー。」
いきなりドアを開け、ズカズかとはいっていく、ドケチ・神田。
ノックくらいしようよ。
「おー、医局長!」
はあ、戸田もおかまいなしか。
戸田が、急に一昨日入院した。
なんてことはない、先日心筋梗塞を患って、3ヶ月たつから、自主的に健康診断をしたいと検査入院をしたのだ。
どこも今のところ・・・顔以外は悪くない。
だから、元気すぎて、どうしようもない。
今日も、昼を貴賓室で食べようとしつこく誘われて。
今日の私の予定もバッチリ把握され。
何で、今日に限って、午後が空いているんだ!
理事長も、地元の権力者戸田の言うなりで、私は戸田の担当だ…。
早速タバコに火をつける。
戸田との交換条件で、この部屋を喫煙ルームとして提供するなら、担当になってやってもいい、と言ってやったら、すぐさまOKした。
「あ、城田俺にも、1本くれ。」
わ、珍しい。
神田先輩がタバコを吸うなんて。
大学時代は私と競う程のベビースモーカーだったけど、最近やめていたのに。
箱を開けて、取り出しやすいようにしてやる。
何か、昔みたいだな。
「…火。」
そう言うと、神田先輩の顔が近づいてきて、私のくわえているタバコに自分のタバコをくっ付けた。
めんどくさがり屋の先輩は、研究室でよくこうやって火をつけていた。
「レイ!こっちに、座れ!!」
急に、ぐいっ、と腕を引っ張られた。
「あ、瀬野将、来てたんだ?」
パーテーションの向こうに座っていたみたいで、気がつかなかった。
何故か、顔がムゥッ、としている。
「抱かれたい男でも、やきもち妬くんだなー。おもしれー。」
何故か、ゲラゲラ笑う神田先輩。
抱かれたい男?
何それ?
「何言ってんだ、医局長。将君は、レイちゃんに一目惚れでナンパしてたんだぞ?しかも、レイちゃんは迷惑そうで、ガン無視!くくっ…俺が心筋梗塞になんなかったら、ハイ、それまで。だったんだぞー?」
戸田の言葉に、益々ムゥッ、とする瀬野将。
何か、珍しく拗ねて可愛いから、くわえタバコでまあまあと宥めながら、手を握ってやった。