MOONLIGHT
手で押さえ続けていた、首…。
私は、戸田の所に戻ると、戸田が座っているソファーの前に跪き、戸田と目線を合わせた。
「「え?」」
戸田と、瀬野が驚いた声上げる。
ネクタイに手をかけ、戸田の首元を緩める。
「え?あの?ちょ…「静かに!暴れないで。あなた、咽が痛いの?他に胃とか痛くない?」
私が、慌てる戸田の声をさえぎり、質問をする。
真剣な口調が伝わったのか、戸田が頷いた。
「に、ひゃんひちまえから…ろど、が痛かったんらけど、たいひたことは、らくて、かじぇのろどのくすりをろんでて…胃は、ちょっろ、今朝から時ろき、痛いから…って。」
私は、戸田の答えを聞きながら、自分のバックを絨毯の床に置いた。
「…とりあえず、動かないほうがいい。このバックを枕にして、横になって!」
「ぇ?おれぇひゃん…。」
ろれつの回りが酷くなっている……。
戸惑う戸田を、有無もいわせず横にさせる。
私は浜田を振り返り、救急車とグラスに水3杯と、輪ゴムを頼んだ。
「あのっ、戸田さんは…。」
瀬野が今までとうって変わって、真剣な表情で聞いてきた。
「もしかしたら、心筋梗塞の初期かもしれない。でも、短時間内に処置すれば、手術もなしで後遺症もなくて済むかもしれないから。安静にしていて?」
最後は、戸田にむかって話しかけた。
ここら辺の地理がわからないので、大畑先生に電話をかけた。
状況を話すと。
「鎌倉学院大学病院へ行きなさい。電話をしておくから。」
そう言われた。
それから、浜田がもってきた水、3杯を立て続けに飲み、輪ゴムで背中まである髪をくくった。
瀬野に向き直り、鎌倉学院大学病院へ行くから、戸田の家族に連絡をするよう頼んだ。
まさか、急患でこんな風になるなんて思ってもいなかったから、大分飲んでしまっているが、病院まで付き添えば大丈夫だろう。
その時の私は、簡単にそんなことを考えていた。
まさか、横須賀のてっぺんで、私のこれからの運命が変わるなんてこの時は思ってもいなかった。