MOONLIGHT
私の言葉に、ハンドルを持ちながら、吹き出した瀬野将。
危ないって、高速なんだからっ。
「くくっ…あははは…。レイさぁ、俺のことネットで調べたんじゃないのか?俺の両親既に他界してるぞ?しかも、親父は千葉のヤクザじゃなくて、建設会社でダムの設計してたし。俺、出身横浜だし。」
「えぇっ!?じゃぁ、あれは…。」
だって、あの時の瀬野将、ヤクザそのものだったし。
汚い話だけど、オサム…失禁してたし…。
クスクス笑う、瀬野将。
その、目じりが可愛い…なんて思うのは、かなり瀬野将にイカれているな、私も。
「だからっ、俺、役者だってば。丁度、ドラマで『水口組の若様!』っていうヤクザ者やってたし。仕事柄、手をあげると周りに迷惑かかるし、レイとの結婚もうまくいかなくなるの目に見えてるし…だけど、腸が煮えくりかえっていて、前日に戸田さんから話を聞いた時は、もう堪んなかったんだよね。芸能生活終わってもいいから、ボコボコにしてやろうかとおもったんだけど…。」
「芸能生活、終わっちゃだめじゃん!!せっかく、ここまで努力してきたんでしょ?」
瀬野将の経歴を見て、瀬野将の倉庫部屋の資料を思い出した。
瀬野将はただルックスがいいからだけじゃない。
今の瀬野将の位置は、人一倍努力してきた結果だと思ってる。
「ダメじゃない。惚れたやつのためなら、なんだってできる。実際、レイだって、スゲー研究きっぱり止めて、町医者になっただろ?」
そりゃそうだけど。
「でも、だからって…。」
「うん。中川殴ったって、何にもなんないよな。俺の目的はレイを幸せにすることだし。職失ったら、食わせていけないし…あ、私が食わすから、なんていうなよっ!」
う、言いそうになった…確かに。
瀬野将は私をチラリ、と見ると、私が思ったことがわかったのか、クスリ、と笑った。
そして、言葉を続けた。
「だから、戸田さんが、ハッタリ戦法でいけって……ハッタリで脅して、あいつに少し反省させてやろうと思ったんだよ。」
なるほど。
「いや…瀬野将の、演技力、ハンパなかった…。」
そう言うと、瀬野将は嬉しそうに前を向いて笑った。
そして、今度お互いの親の墓参りに行こう、と言ってくれた。
凄く、嬉しかった・・・。