MOONLIGHT
「…大学の先生ですか?」
ペンを置いたところで、話しかけられた。
不思議と、鬱陶しくない。
相席の彼は、アメリカンクラブサンドを頬張りながら、私の手元を見ていた。
ここのアメリカンクラブサンド、量が凄くあって美味しいんだよね。
少しいたずら心がおき、私はニヤリと笑った。
「アメリカンクラブサンドをひと切れくれたら、話してもいい。」
すると、彼はクスクス笑い、どうぞ、とうやうやしくお皿を差し出した。
ありがたく、ひと切れ頂いた。
美味しい。
「半分当たり。T大じゃないけど、大学で教鞭をとってる。あと、医者。」
美味しくひと切れ平らげると、私は彼のさっきの質問に答えた。
「え、お医者さん?…てゆうか、凄く旨そうに、豪快にたべたねー?」
私の職業から、アメリカンクラブサンドの食べ方に話題は移ったらしい。
もっと食べる?とお皿を差し出されたけれど、私は丁重に断った。
アメリカンクラブサンドを食べる為に、消してしまったタバコに、火をつけた。
目を丸くする彼。
シケモクを吸う女にあきれているんだろう。
タバコを吸い終え、時計を見ると13時すぎ。
私は、荷物をしまいだした。
「名前、教えてくれない?」
立ち上がりかけた私に、彼がそう言った。
何で、名前なんか聞くのかよくわからないけれど。
ピシャリと断るのも何なので。
「縁があって、また会えたら、次教える。」
そう言ってみた。
すると彼は、少し残念そうな顔をして。
「じゃー、次を楽しみにしてる。それまで、S子さんって呼んどくから。」
そう、私の左耳を見ながら彼は、言った。
ああ、将のピアスか。
私達はお互いのアルファベットを交換してつけている。
だから、将の耳には『R』がついている。
「何か、その呼び方、性癖を表しているみたいで、嫌だ。」
そう言って歩きだすと、後ろで彼が大笑いする声が聞こえた。