MOONLIGHT
家族に状況説明をしたあと、コーヒーを奢ってやるといわれ、自販機コーナーに連れてこられた。
って、相変わらずケチだよね、神田先輩。
「悪かったな、城田…じゃなくて、中川。助かった。本当にありがとうな。でも、何でお前、横須賀で飲んでたんだよ?」
しかも、空気読めないところ、相変わらずだし。
まあ、どうせわかることか…。
私はため息をついた。
「あー、大畑先生の所で説教をうけてきました。それから、私中川じゃなくて、城田にもどりましたんでー。」
棒読みでそう言うと、神田先輩は驚いた顔をした。
「何でっ!?」
「何で、って…ズバリききますねー。」
「ああ、俺には聞く権利があるぞ!!」
はいはい、そうでした。
「簡単にいうとですねー。旦那に好きな人ができて、その人に子供ができたとー。病院も軌道に乗ったんで、別れてくれと…。まあ、その浮気が、姑協力のもとだったんで、私全然気がつかなくて…。」
淡々と説明をしたら、神田先輩に怒鳴られた。
「おまえっ、冷静にそんな説明してる場合じゃないだろっ!!お前に非はないじゃないか!!アイツのオヤジが急死して、実家のちょっとばかしデカイ病院が大学出てまもないアイツだけじゃまわせなくて、将来有望のお前がアイツのために町医者になったんだぞ?軌道にのったら、ハイさよなら、か?お前利用されたんだぞ?もっと、怒れよ!!」
まあ、そうともいうかもしれなんだけど。
「でも、先輩。私もさー、仕事中心で、決していい奥さんじゃなかったしー。子供も、仕事が落ち着いてからって、後回しにしちゃったし。」
「そのおかげで、アイツの病院が軌道にのったんだろ!?」
「まー、そうですけど。」
「何で、あっさり別れたんだよっ!?お前がわかれることはなかったんだろ?何で!!」
先輩が怒ってくれるのはありがたいけど。
私は、ため息をついた。
「………先輩、お腹の子供に、罪はないんですよ?」
そう言うと、先輩は黙り込んだ。