MOONLIGHT


梶教授の研究室は変わっていなかった。

梶教授は日本で、というよりもアメリカでとても有名な人だ。

医師免許を取ってから、アメリカに渡り色々な大学を渡り歩いた。

斬新な発想と、繊細な指先。

医学の道に進む為に、生まれてきた人だと思う。

この人も、大畑先生の教え子だ。

50歳になったばかりで、フットワークも軽い、T大の期待の星だ。


例の研究の話になるとおもったが、何故かNYの論文の話になった。

色々話していくうちに、ついつい熱くなってしまった。

疑問点を話すうちに、先程のメモを取り出してはなしていたら、メモを取り上げられた。

え、と思っていたら。


いきなり、梶教授が電話をし出した。


「神田か?ああ、レイ姫来てる。」


げ、相手は神田先輩なのか。

しかも、嫌なあだ名をまだ性懲りもなく、使ってるし。

そんなこと言うの、梶教授だけだけど。

そんなことを考えていたら、とんでもない話が聞こえてきた。


「おー、それでなー、来週あたり、レイ姫、NY連れていきたいんだけど、いいかー?」


は?


私が、焦っているうちに電話は終わったようで。


「じゃあ、来週NYな。そんな、疑問かかえてたら、やっぱ本人に聞くべきだろ。論文発表したやつ、俺のダチだから、心配するな。きっちり紹介してやる。」


てなわけで。

断るわけにいかず。

強引にNY行きが決定した。


多分、ハメられたんだと思う…。






疲れきって、研究室を後にした。


時計を見ると、5時過ぎ。

時間の経過を確認してまた疲れがどっと押し寄せた。

取り敢えず、大畑先生に電話する。

電話に出るなり、土産はグランドヒロセNYのマカロンでいいから、といわれた。

はあ、こりゃ、何を言ってもダメだ。

そう思った時、週末迄にこの論文の件で、疑問など思ったことをレポートにまとめてこい、と真面目な声で言われた。

やっぱり、大畑先生だ。

お礼を言って、電話をきろうとしたら、最後に結婚祝いはなにがいい?と聞かれ、泣きそうになった。

気持ちを立て直し、先生の持ってる百万は下らないという、ワインの銘柄を言ったら、10秒ほど沈黙になったので、慌てて冗談です、と言って電話を切った。


大畑先生の電話で少し、気持ちが楽になり、帰ろうと思ったら、携帯がなった。


浮気男からだ。




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