MOONLIGHT
私の手のひらに水をこぼし、弁慶に少しずつ水を飲ませた。
おやつも、手から食べさせた。
トイレもすませ、少し落ち着いたようだ。
弁慶自身も、楽な顔になった。
「レイ…撮影できないと、困るんだ。俺だけの問題じゃないし…。」
将が困り顔で私の膝の上の、弁慶の頭を撫でる。
「ねぇ、弁慶にちゃんと話をしたの?弁慶はちゃんと話せばわかるんだよ?お願いしてみたら?」
そう言って、弁慶に将が話があるんだって、あとでくるから話をきいてあげて、と言って、弁慶を将の膝に置き私は立ちあがった。
この部屋の…まあ、スタジオだけど、隅に喫煙コーナーがあるのを見つけてそこへ行き、私は遠慮なくタバコを咥えた。
「あ!やっぱり、君!!縁があったね!?」
タバコをふかしていると、きいたような声がした。
振り返ると、昼間のアメリカンクラブサンドの彼。
「あ…。」
まさかの展開に、少し焦る。
「「何で、此処に?」」
声がかぶって、2人でクスリと笑いあった。
「でも、凄い偶然。」
彼が爽やかな笑顔で笑う。
「本当に。」
「スゲー嬉しい、俺の願いを神様が叶えてくれたって、感じ。今年のサンタさんのプレゼントは辞退してもいいくらい、嬉しい。」
「何それ。」
ナンセンスな冗談が案外ツボって、ケラケラ笑った。
「レイ?何してる?」
その時、いつもの甘いハスキーボイスではなくて、かなり低いハスキーボイスが聞こえてきた。
腰に手が回される。
え?
「あれ、君レイって言う名前?S子さんじゃなくて?」
意外という顔で、彼が聞いてきた。
「だから、S子は嫌だってば。」
そう言うと、彼が吹き出した。
この人笑い上戸だな、と思って見ていたら、グイッ、と無理やり顔を将の方へ向けられた。
く、首が痛いんですけどっ。
かなりムッ、として将を睨もうとしたら。
ちゅ。
いきなり、キスをされた。
え。
え。
え。
「「「「「「「えーーー!?」」」」」」」
人数はそれほどでもなかったけれど、スタジオにいた人全員が驚愕した。
声に驚いた弁慶が、将の腕から私に抱かれようと暴れ出した。
「将、弁慶をかして。」
暴れている弁慶が可哀相で、手をのばす。
だけど、その手を引っ張られて。
将の腕の中に入った。