MOONLIGHT
そこへ、お話中すみません、と、ワイルドなイケメンが部屋へ入ってきた。
20代前半のかなり雰囲気のあるイケメン。
服も、私が好きなスペインのブランドのものを着ている。
あ、私が今日着ている黒のスーツもそうだった。
珍しいな、日本ではあまり着ている人いないのに。
それに、誰でも似合うという服ではない。
その人に強さがないと、なかなか着こなせないが、この人はとても上手に着こなしている。
「え、と…。レイさん、に颯天社の西条さんて方がお会いしたいそうです。取材じゃない、って…約束したことがあるから、っておっしゃってるんですが。」
ワイルドな彼がそう言った瞬間、将の目がキツくなった。
う。
確かに約束した、よね。
「あ、今いきます。」
そういうと、将がグイと私の腕をつかんで俺も行く、と言って弁慶を私の腕から奪った。
私は夕真さんたちにお礼と、このまま帰るので辞去の挨拶をした。
すると今日は俺も帰るよ、と将が言いだした。
「え、レイがいないのに泊まるわけないだろ。俺とレイは一心同体だ。」
一心同体って…皆の前で発表するかな?
おかげで、皆ニヤニヤしてるし…って、さっきの綺麗な女の人だけ、微妙な顔してるけど…。
言いすぎたかな。
と思ったのだけれど。
「やっぱり、将君の言葉のセンス、最悪。」
一刀両断。
はあ。
一瞬にして、部屋の中の空気変わっちゃったし。
戸田がため息をつく。
「志摩ちゃんさー。今の言葉、レイちゃんが言うならいいけど、この場合志摩ちゃんが言うのはどうかと思うよー、おじさんはー。」
戸田はそう言って、どうにか空気を変えようとしているけど。
いまいちだな。
夕真さんは困った顔をしている。
将は…あれ、全然気にしていない?
ていうか、私しか見てないし。
もう・・・可愛いじゃないか。
私は、クスリ、と笑い。
「じゃー、将。帰ろうか?NY行きの話はあとでするから。」
そう言って、将の手をとった。
他人がどう感じようと、自分に向けられた言葉に気持ちがこもっていれば、それでいい。
私が将の浮気を疑って、将に対しての態度がおかしくても、将は私から目をそらさなかった。
私を正面から見つめていてくれた。
考えてみれば将と出会ってから、将はいつも私に対して目をそらさず、向き合ってくれている。
お父さんのことだって、意地になる私をとめてくれた。
将と出会って、将に教えられたこと。
目をそらさないで、逃げないこと。
大切な事には正面から向かわないと、なにも手に入らない。
何も解決しない。
私は、廊下を歩く隣の将の手を、ギュゥッ、と握った。
それだけのことで、将が嬉しそうな顔をする。
「どうした?」
甘いハスキーボイス。
その、甘さに安心して心が蕩ける。
私は将の瞳を見つめ、囁いた。
「私達さ…。」
「ん?」
「一心同体、だね。」
「だろ?」
短い会話なのに、お互いの気持ちが通じる。
目を合わせて、フッ、と微笑む。
が。
「わんっっ!!」
甘い雰囲気から取り残されたやつが、不満を申し立てた。