MOONLIGHT
玄関に立つ、西条さん。
「すみません、お待たせしました。」
待ちくたびれたような顔をしていたが、私に気がつくと表情がもどったようだ。
「いえ、夜分遅くにすみません。あ、瀬野さんも…来月の特集インタビュー宜しくお願いします。」
へぇ、将、特集で雑誌に載るんだ。
買おうかな。
「…はい、宜しくお願いします。で、彼女に用事ってなんでしょうか。彼女は一般人なので記者会見では公にしませんでしたが、私の婚約者です。写真週刊誌に記事にされた相手も彼女です。」
堅い口調で、将がまくしたてた。
はあ、わかってるよ、彼もそんなことはきっと。
「はい、何となくわかりました。」
な、何となく?
バッチリわかったでしょう?
キスまでしてたし。
弁慶は飼い主の将よりも私になついているし。
って、将…顔怖いし。
ああ、もう面倒くさい。
「西条さん、約束。私の名前は、城田レイ。
でも、もうすぐ瀬野レイになるけどね。」
きっぱりと言った。
なのに。
「うん、わかってる。さっき婚約会見見てたし。でも、まだ1ヶ月あるよね…俺さ、レイさんに一目ぼれなんだ。1ヶ月諦めないで頑張ってみようっておもってる。今日は、それを伝えたかったんだ。」
え。
そう言って、固まる私に西条は名刺を渡し、またね、と言って帰って行った。
はあ。
完全に面倒くさい状態じゃないか。
ま、だけど。
面倒くさいからって逃げないで、目をそらさないでいよう。
「将、怒らないでよ。私が好きなのは将だけだし。」
そう言って、仏頂面の将の頬にキスをした。