リアルフェイス【短編】
あたしが鉄平よりも強くてたくましいから。
だから、本当の自分を知られることが怖い。
幸い、鉄平と和くんの三人で会うことなんてないから、上手く隠せている。
しかし、いつも練習試合は怖い。
いつ、鉄平に喝を入れている姿を見られるかと、ここにいることは少し辛い。
世界のすべてから耳を塞ぐかのように、あたしは足に顔を埋めていた。
しかし、遮断していても、試合開始のホイッスルの音は耳を貫いた。
その拍子に、顔を上げてしまう。
あたしの瞳は真っ先に和くんを見つける。
ああ、どうして彼は誰よりも輝いて見えるんだろう。
彼のことを嫌いになれたら、こんなふうに苦しまなくていいのに。
そんな後ろ向きなことを考えると、まるでそれを見透かしたかのように、和くんがあたしを見た。
ときめきではなく、後ろめたさから、ドキッとする。
和くんは試合中だというのに、あたしに向かってガッツポーズをして見せた。
「……バカ」