リアルフェイス【短編】
「あんたもよくやるわね」
「何が?」
友達の由実(ゆみ)のそばまで来ると、彼女は開口一番に言った。
由実は長い髪の毛をポニーテールにして、制服の紺と白のセーラー服姿で地面に直に座り込んでいる。
あたしの気配に気づいて、こちらに向けたその顔には、呆れたような表情が浮かんでいた。
「和くんだっけ。彼氏の前では可愛いキャラを作ってるじゃない。見ていて鳥肌が立ちそうよ」
「違うわよ! 作ってるんじゃなくて、好きな人の前ではあれが普通なの!」
由実が両腕を擦る仕草をしたから、あたしはその横に腰を下ろしながら反論した。
「普通ねえ……」
彼女が不服そうな声を出す。
それを聞きながら、あたしは足を抱え込んだ。
と言っても、あたしも制服だから、スカートのなかが見えてしまわないように、太ももの下に回した腕でスカートを押さえている。
いくら学校で試合をするとはいえ、制服ではなく私服でも構わないなら、スカートなんて選ばないのに。
座りのポーズを確保すると、視線をグラウンドに移した。