リアルフェイス【短編】
由実はまだ何か言いたそうだったけど、言っても無駄だと思ったのか、押し黙った。
グラウンドの両端にはゴールポストがあり、あそこはしばらくの間、単なるグラウンドではなく、サッカーのフィールドになる。
日曜日の今日、あたしの高校と和くんの通う祥瑛(しょうえい)高校のサッカー部で、練習試合が行われる。
祥瑛高校は歩いて20分で行けるほど近くにある学校で、その近さから交流が多い。
その一つが、運動部の練習試合で、それぞれのグラウンドを使う。
サッカー部においては、前の試合が祥瑛だったから、今日はうちだ。
向って右側で青のユニフォームの祥瑛の生徒が、左側で緑のユニフォームを着たうちの生徒が練習していた。
それを眺めていると、どこからともなく「悠衣ちゃーん」とあたしを呼ぶ声がした。
それを聞いて、思わず顔を足の間に埋める。
「呼んでるわよ」
「……知ってる」
気付かないふりをしたいとしっているくせに、由実はいじわるだ。
あたしはしかたなく顔を上げて、この声の持ち主を目で探した。