リアルフェイス【短編】

由実はまだ何か言いたそうだったけど、言っても無駄だと思ったのか、押し黙った。


グラウンドの両端にはゴールポストがあり、あそこはしばらくの間、単なるグラウンドではなく、サッカーのフィールドになる。


日曜日の今日、あたしの高校と和くんの通う祥瑛(しょうえい)高校のサッカー部で、練習試合が行われる。


祥瑛高校は歩いて20分で行けるほど近くにある学校で、その近さから交流が多い。


その一つが、運動部の練習試合で、それぞれのグラウンドを使う。


サッカー部においては、前の試合が祥瑛だったから、今日はうちだ。


向って右側で青のユニフォームの祥瑛の生徒が、左側で緑のユニフォームを着たうちの生徒が練習していた。


それを眺めていると、どこからともなく「悠衣ちゃーん」とあたしを呼ぶ声がした。


それを聞いて、思わず顔を足の間に埋める。


「呼んでるわよ」


「……知ってる」


気付かないふりをしたいとしっているくせに、由実はいじわるだ。


あたしはしかたなく顔を上げて、この声の持ち主を目で探した。


< 4 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop