リアルフェイス【短編】
ソイツはすぐに見つかった。
仲間のもとから一人外れ駆けてくる緑のユニフォームを着た小柄な少年。
幼なじみの田中鉄平(たなか てっぺい)だ。
幼なじみと言っても、家が隣とかそういう関係ではなく、小学校から高校までずっと同じ学校のくされ縁。
そのなかで、同じクラスのなったことも数知れず。
鉄平は昔から頼りなく、世話焼きなあたしは何かと面倒を見ていた。
そのおかげで、あたしがいなくてもまともに生きられるのか心配になるほど、鉄平はあたしに依存してしまっている。
「悠衣ちゃん、どうしようー!」
「はいはい、どうしたの」
いい歳して、泣きべそをかきながらしがみついてくる鉄平の頭を撫でた。
鉄平はあたしよりも小さい。
身長は157センチ。
と言っても、鉄平が意地で157センチと言っているだけで、本当は155センチしかないことを知っている。
「あのね、今日、スタメンに選ばれたの。どうしよう、困るよ!」
それを聞いた瞬間、あたしの頭からブチッと何かが切れる音が聞こえた気がした。