リアルフェイス【短編】
嫌な予感が胸をよぎるとほぼ同時に、由実の呆れたような声が耳に届いた。
「……いつもながら、すごいわねぇ」
とっさに由実に視線をやる。
そうか。
さっき感じた視線は由実のものだ。
鉄平と話をしていて、彼女の存在を忘れていた。
和くんと目があったわけじゃないもの。
きっとさっきのは勘ぐりすぎだったのよ。
あたしは怖い。
彼に本性を知られてしまうことが。
本当は可愛い女の子なんかじゃない。
鉄平をやる気にさせるためとはいえ、あんなひどいことを簡単に言ってのけるような女。
あたしは膝をぎゅっと抱え込んだ。
足の上から、和くんを見る。
和くんは一人でボールを蹴っていた。
リフティングってやつだ。
前に蹴りだすのではなく、上に蹴って、体にあてて、その繰り返し。