リアルフェイス【短編】

遊んでいるみたいなのに、ボールが地面につくことはない。


すごいな、和くんは。


出会ったころは鉄平と同じように自信がなくて、頼りないところがあったのに、彼はいつのまにか大きくなってしまった。


元々、テクニックはあったのだと思う。


1年ながらに試合に出ることになって、緊張していた和くんが懐かしいよ。


「そんなに気を遣うなら、彼氏にもSを見せるか、鉄平くんにも優しくするかしたらいいのに」


「Sじゃないもん! ただ、鉄平を見てるとイライラして、いじめたくなるだけで」


「それが十分Sだっての。彼氏の前と普段とで差がありすぎ」


痛いところをつかれて、思わず足越しから由実を睨みつけた。


「だって、こんなトコ見せて嫌われたくないもん」


「嫌うようなら、好きになる価値もない最低な男だったってことでしょ」


「違う! 和くんは最低なんかじゃない。だけど、だけど、怖いの。内藤先輩や寺田くんみたいになったらって……」


「悠衣……」


中学のとき好きだった内藤先輩も寺田くんも、告白したあたしに「おまえを女として見れない」って言った。

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