波風のきこえるところ
タイトル未編集
空と青時と愛海は香色村で小さい頃から一緒にいる。
だけど、一緒にいるだけで好きであるわけではなかった。
小1の頃――…
「空はな、あおちゃんが大好きなんじゃ」
空の母がそう言った。
「あおちゃんはもちろん婿にきてくれるじゃろー?」
「当たり前じゃー。持ってけ持ってけ」
よくある幼いころの勝手な母たちの会話。
空と青時の母が楽しげに話しているのを、砂場でお山を作っている二人が見ていた。
勝手なことを…。けれど、嬉しかった。
(あおちゃんの…およめさん)
頬を赤らめて、空は小さな理想を描いていた。
大人になった青時の横に、自分がいることを―――…。
「のう?せーいじ?」
青時の母が青時に話をふる。
「空と――――?」
空は青時の言葉に期待した―――。
(あおちゃん……)
ドキドキしていた。
けれど。
「おれはー愛海とケッコンするー!!」
青時はとびきりの笑顔を浮かべていた。