波風のきこえるところ
その瞬間、空は心に穴のあいたような気分になった。
予想外だったことに、空の母はあわてる。
「ま、愛海ちゃんか!?もちろん愛海ちゃんもスキだけどー 空はどうじゃろか?」
空の母は必死に青時に問い詰める。
わざとみたいにニコニコしながら今度こそ期待する母。
「空は――――――――別にじゃ」
けれども、青時の言葉は違った。
「別になーんも思わん」
「……。」
幼いながら、青時の気持ちははっきりしていて…。
「おれぁ、愛海がスキじゃ!およめさんは愛海がいい!」
子どもの言葉は残酷。
素直であるからこそ、残酷だった。
空はそれまで抑えていた我慢が、限界になった。
気づけば、うわぁぁんと大泣きしていた。
「空っ!!?」と、母が駆け寄る。
「こら青!あやまり!!」
青時の母が、ガコッとげんこつをぶつけた。
青時はいってーと頭をおさえてかがみこむ。
空と青時の母が、一生懸命なだめていたことを今でも覚えている。
――――――大失恋なんて6歳のころに経験した――…。