ハジケロ!!
俺はとぼとぼと、日が暮れる雑踏を歩き、仮病という重病により迫り来る人生の最後に涙が溢れた。
あんな変なオッサン共にさえ、認められない事すら悲しかった。
俺は、近くの川が流れる土手に座り込んだ。
風が優しく俺を通り抜け、鼻から飛び出る毛をチラチラとなびかせる。
チンチロリン、と鳴る筈のない鼻毛の音に、無性に腹が立って、勢いよく引っこ抜いた。
一本だけを引っこ抜いた筈が、数10本も抜けて、痛みとカラダに迫り来る違和感にまた涙が溢れた。
「お兄ちゃん、どうしたの?どこか痛いの?」
振り返ると、そこには先ほど病院の外にいた女の子がいた。
「ヤヤもねぇ、何だか頭が痛いの」
座った俺の目線と同じ高さの女の子は額を抑えて丸い目を覗かせる。
「あぁ、お兄ちゃんは大丈夫だよ。鼻毛が思いの他、抜けただけだからね、早く良くなるといいね」
そう言って俺は、女の子の頭を撫でてあげた。
翌日、何とか学校へ行くと、小森さんの体操服が盗まれたと大騒ぎしていて、
何故だか小森さんは、真っ先に俺を疑った。
小森さんは、何かと俺に突っかかる。
一種の照れ隠しなのだろう…
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