ハジケロ!!
view2:総一郎
私の辞書に不可能という文字は345ページに載っている
私は今、マイホームでこれからランチを楽しむところだ―。
二階の書斎で読書をしていたところに、栄子(妻)に呼ばれ、一階のダイニングへと降りてきた。
ダイニングのテーブルの上には、から揚げ弁当(特価300円)が置かれている。
小さな紙切れと一緒に。
手に取って見てみた。
“食事が済んだら、皿洗いしといて下さい。ついでに風呂の掃除も”
と書かれている。
私は椅子に腰掛ける前に、左手に持っていた辞書を開いた。
勿論、"ついで"という言葉の意味を調べる為だ。
【ついで】あることを行うとき、それにかこつけて別のことを行えるような良い機会
この場合、栄子は、私に皿洗いをやってもらうついでに、それにかこつけて、風呂掃除もやってもらえる良い機会だと考えた訳か…
フム、なる程。合点がいく。やっぱり私には、まだまだ辞書が必要なようだ。
何せ日本語は非常に難しいからだ。
私は辞書を常に肌身はなさず持っている。
あぁ、そうだ。
紹介が遅れましたな。私の名は、
早阪 総一郎(はやさか そういちろう)
42歳。ごく普通のサラリーマン。普通過ぎるが故に私は今、日曜だというのに、一人でから揚げ弁当を食し、
食後の運動として、皿洗いと風呂掃除を任される運びとなっている訳だ…