ハジケロ!!

仕事(皿洗いと風呂掃除)を終えた私は、再び椅子に腰掛けた。

ふと、ここから見えるリビングへと目をやった。

ソファーに金髪の若い青年が座り込んでいる。

彼は何者なのだろう?

半年程前から、私の家に住みついている。

直子(娘)といつも一緒にいる事から察するに、直子の彼氏なのだろうか?

私は、彼とは一度も会話をした事がない。というより、もしかしたら彼には私が見えていないのかもしれない。

金髪という事は、外国人なのだろうか?


私は、意を決して、ソファーに座ってテレビを見ている彼の元へ歩み寄った。



「君、名前は何と言うんだね?」

「はい?」

青年は、私の方を向いて怪訝そうな顔をしている。

質問の答えが返ってこない。日本語が通じないのだろうか?

やはり、外国人か?

私は、もう一度質問した。

「What your name?」

英語だ。これならバッチリだろう。

……返事がない。

それどころか、驚いた顔をしている。発音が悪いのか?

私は左手に持っていた英会話の辞書を開き、正しい発音の仕方を読んだ。

フム、なる程。
これで通じる筈だ。



「ホワッチャネェイ?」

私は完璧な発音で青年に再三の質問をした。

すると、何故か青年は、走ってリビングを後にした。


…彼の謎は深まるばかりだ。

今夜、娘の直子にでも聞いてみるとしよう。
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