ハジケロ!!
「直子!まだオムライスの一番美味しそうなとこが残っているじゃないか」
私は、チキン南蛮を頬張りながらも、オムライスを見てゴクリと喉を鳴らした。
「いらない」
そう言って娘の直子は椅子を直し、立ち去ろうとしている。
「食べ物を粗末にするなといつも言ってるだろう? オムライスが飽きたのなら私のチキン南蛮でも食べるか?」
「チョーいらない」
チョー…
チョーとはどういう日本語なのだろうか?
「直子っ!なんだね、その言葉はっ!?」
私は意味が解らずに、膝の上に置いてあった辞書を手に取り、今にもチョーという言葉の意味を調べようかという格好をしてみせた。
直子は眉間にシワを寄せるでもなく、冷え切った目で私を見てこう言った。
「…ウザイ」
ザクッ。
私の心はまるでカマイタチに切り刻まれたような音を立てた。
ウザイという言葉の意味は、以前に現代用語辞典で調べた事がある。
鬱陶しい。
邪魔。
人を傷つけるには強力なこの二つの言葉を合わせもつのが、
ウザイだ。
人の心をたったカタカナ三文字で切り刻むなんて、
まるで、真空系の呪文のようだ。