ハジケロ!!


私はチキン南蛮の最後の一口を急いで頬張り、直子の食べ残しのオムライスに手を伸ばした。


「やれやれ。しょうのない子だ。どれどれ、私が食べてあげよう」

そう言ってゴクリと喉を鳴らす私の手より速く、妻の栄子がオムライスをさらった。

そして、一口でペロリと平らげる。

栄子は席を立つと、私を見下ろして言った。


「皿洗いお願いします。ついでにお手洗いの掃除も」


そう言って食卓を後にした。

ついでと言う言葉は我が家では、とても効率のよい単語のようだ。

まだ食事を続けている息子の勉が私を見てこう言った。


「オヤジはさ、KYなんだよ」


勉はそう言って、オムライスを口に流し込み、食卓を後にした。


KY…。

私は、意味が解らずにテーブルの上に置いてある辞書を手にとりパラパラと捲りながら考えた。

フーム。

KY。カッコよくて、優しいお父さん、

もしくは、

気さくで、優秀なお父さん…

フム、なる程。合点がいく。




…あの流れで、そんな訳はない。

私としては珍しく自分に突っ込みを入れ、皆が食べ散らかした食器を片付けた。


早阪総一郎42歳。

板垣退助をこよなく愛する私は、

家庭内での
自由民権運動に日々取り組んでいる……
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