壱億円あ~げる
参加者其の参

「先生、大変です。一大事です」

新聞を握りしめた亀山洋子が、事務所に血相を変えて飛び込んできた。

「朝から何騒いでいるんだ。今月も家賃や水道代が払えず、電話も止ったままの我が鶴見探偵社がつぶれる以上に大変な事があるのかね」

自称日本一の探偵という鶴見大吉が、うるさそうに眼鏡をずりあげた。

「い、壱億円もらえたら、すべてが解決しますよ。先生」

「その件なら、すでに検討済み。大きな問題があって、わが鶴見探偵社は参加できないのだ」

「なんですか、大きな問題って」

「すなわち、参加するにしても金が無い。30万必要なのだろう。この登録とやらをするには。そんな大金が、いったいどこにあるんだ」

「それはですね・・・」

「そんな大金があったら、家賃払って、電話使えるようにして、公園のトイレまで行かなくてもいいようにする」

「実は、あるんです。30万円が」

「えっ?」

「あの、実は少しづつ銀行に積立してたのが満期になって、30万円程あるんです」

「そうだったのか。君は助手として昔から才能があると思っていた」

「では、先生。壱億円手に入れましょうよ。私、登録の申請します」

「いや、申請はもう済んでいる。万が一の奇跡を信じてな」

「さすが日本一の探偵、鶴見大吉センセイ」

亀山洋子は、親子ほども違う鶴見に抱きついた。



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