わたしの中の　私
会社の駐車場に着いたので、私は降りようとして、助手席ドアに手をかけた。

すると勢いよく部長が私を引っ張った。


「……えっ！？」


一瞬のことで私は何が起きたか理解できなかった。

振り向きざま部長が私にキスをしたのだ。

予想外の出来事に、私は戸惑った。


「……ふぅ……ここ……もう会社ですよ。
……誰が見ているか……。」


部長の唇が触れるか触れない距離で口を開いた。


「別に構わないよ。
別に悪いことしてるんじゃないし。
両方の両親にも承諾をもらって結婚することが決まってるんだから、問題ないじゃないか。」


私の唇をまた塞いだ。

部長の不規則な吐息が熱い。

部長の舌が口内に侵入し絡みつく。

車外の状況を気にする余裕もなくなり、意識が薄れていった。

私は矢嶋さんから逃げられなかった。
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