わたしの中の 私
私も佐藤主任も定時で仕事を終わらせ、佐藤主任がよく行くという馴染みの居酒屋に連れていってくれる。


「ここの料理、なに頼んでも美味しいんだよ。」


佐藤主任はお品書きを捲りながら店員さんに次々と注文していく。

普段ほとんど飲まない私。

しかし今日はペース配分も考えず、勢いまかせでお酒を次々注文しグラスを空けていった。


「…しゅ……にん……私って魅力ないんですね。」


私は目を潤ませながら鼻の奥がツンと痛くなるのを我慢した。

しかしお酒が進むにつれ、気心知れた佐藤主任に一方的に話をしていた。


「……そんな事はないよ。
優葉を狙っている人、何人もいるんだよ。
私の同僚もね。
優葉の魅力に気づかない男とは別れて正解!」


私の後頭部をヨシヨシと言いながら、優しく撫でて慰めてくれた。


「主任に迷惑かけてすいません。
そしてお話聞いて下さってありがとうございます。」


「こんな時に、優葉は気を使うことないよ。
妹みたいな優葉のグチなら、いくらでも聞いてあげるよ。
それに優葉は性格もいいし、可愛いから自信もちなさい!」


……魅力的!?

……可愛い!?

そんなこと今まで一度も言われたことはなかった。

きっと佐藤主任の慰めの言葉だと思うけど、落ち込んでいる今の私には佐藤主任の言葉はありがたかった。
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