ささくれとレモネード
突拍子もない推測に、言葉を失う。
「もし何かあったら、頼むわよ」
そうして再び閉められたカーテンの僅かな隙間から、"北村さん"の後ろ姿がちらつく。
今、保健室に居るのは、ふたり。
不気味な響きを孕んだ予言のせいで、彼女の背中が寂しそうに見えてくる。
ーーそんなはずはない。多分、佐伯は俺に悪い冗談を投げたのだ。そうに違いない、いや、そうであってくれーーそうして目を反らしたその瞬間だった。
不規則に鼻をすするような音がした。
彼女の肩は小刻みに震えていて、それから首ががくんと垂れる。
不馴れな出来事のせいで拍動が騒ぎ出す。
ベッドから完全に身体を起こすだけで、どうしたらよいのか分からなかった。
足りない経験値から捻り出そうとしても、どんな慰めの言葉も浮かんでこない。
途方に暮れて頭を掻くと、華奢な肩が一段と強く震えた。