ささくれとレモネード
(なんで泣いてるんだよ、)
幼い頃の思い出の中では、いつでも笑っていたのに。
苦痛を訴えるように、顔を歪めて、両耳を塞いで。
積み重なっていた、いくつもの疑問を押し退けてでも、ただひとつ、訊かせて欲しかった。
(なんでそんな顔してんだ、ハル)
懐かしい、ふたつのほくろが涙で濡れている。
哀しいほどそれは艶やかで、無意識にその指が伸びてしまった。
たったの一度も触れることができなかったのに、見慣れぬ涙の前では、衝動は止められない。
(泣くなよ、なんでーー)
「泣いてる、」
*