ささくれとレモネード
放課後。
濃紺のジャージ姿で玄関へ行くと、三浦が先に着いていた。
ストップウォッチをぶら下げて、慣れたように手首や足首を回していた。
視線に気づいた三浦は動きを止め、声をかけてきた。
「うっす」
『どうも』と榛名は小走りで駆け寄り、下駄箱の戸を開いた。
靴を履き替えていると、頭上から声が降ってくる。
「その後、大丈夫なの」
以前よりも淡々とした口調だったけれど、榛名は申し訳なく思った。
「あ、大丈夫、です」
取り繕うとすると言葉が詰まるのは、嘘がつけない証拠だった。三浦も眉を潜めたが、
「そっか」
そう言って、第二グラウンドの方へ歩を進めて行った。
第二グラウンドは、校地外にあるグラウンド。
通常はソフトボール部が使用しているはずだった。
どうして第一グラウンドではないのか、と問うと、
「ソフト部のやつに聞いたんだ。今日は部活休みらしいから」
それに、サッカー部や野球部の練習に迷惑がかかるだろう、と三浦は付け加えた。