ささくれとレモネード
2
"14時に青葉駅前の広場んとこで"
手元の画面を、この数時間で何度見返したことだろう。
部屋着のまま足をじたばたとさせ、もう一度読んでは固まり、枕に顔を埋めた。
事の始まりは、三浦の一言からだった。
『上手くいったら、その時は付き合ってよ』
そう言い残すなり体育の授業に参加して、周りをざわつかせたかと思うと、ハードルを軽やかに跳んだのだ。
そうして跳び終えた後には柔らかく笑っていたのだ。とても清々しい顔をして。
彼の自尊心を傷つけた、以前のことをこちらはあれほど悔いていたというのに。榛名は唇を噛んだ。
もやもやとした気持ちが心の奥を渦巻いていたところで、三浦はもう一度声をかけてきた。
「北村、あのさ」
”明日、時間ある?”
『開いた口が塞がらない』というのはこういうことかと、実感したのは初めてだった。
「買い物付き合ってほしいんだけど」
何食わぬ顔ですらすらと出てくる言葉に、榛名は目眩がしそうだった。
その瞬間までは。
「俺、じいちゃんと住んでるって言ったよな。そのじいちゃんが熱出して寝込んでるんだ」
途端に話の空気が変わったので、榛名は我に返った。
「おじいさんが?」
「うん。そんで買い物頼まれてるんだけど瞬には『部活だ』って断られて。ほら、さっき言ったろ?」
”上手くいったら、その時は付き合ってよって”