ささくれとレモネード
3人は青葉駅から電車に揺られていた。
高校の最寄り駅を過ぎると窓の外には見慣れない風景が広がる。
大きな川沿いには古くからの住宅地が所狭しと並んでいた。
普段乗ることのない乗り物に、小春はそわそわと膝を擦っていた。
「ねえねえ、どこいくの」
「小春ちゃんにとっては、つまんないところかもなあ」
1人吊革に掴まる三浦が眉を下げると、小春は口を尖らせた。
「こはる、たのしいとこじゃないといやだよ」
「そうか、困ったなあ」
困ったと言う割に焦った様子は見られない。
妹が居ると聞いていたので、きっと面倒見の良い兄なのだろう、榛名は関心を寄せていた。
そこで三浦が向き直る。榛名の背筋は自然と伸びた。
「実はじいちゃん昨日から熱出してたんだけど」
高齢者は熱が出ただけでも身体に相当な負担がかかるはずだ。
眉を潜める榛名に、三浦は続けた。
「昨日の朝、病院に付き添って行ったんだ。遅刻して出かける頃にはいびきかいてたよ」
「なんだかんだ無理してんだよな」と彼は独り言のように付け足した。