ささくれとレモネード


3人は青葉駅から電車に揺られていた。


高校の最寄り駅を過ぎると窓の外には見慣れない風景が広がる。


大きな川沿いには古くからの住宅地が所狭しと並んでいた。


普段乗ることのない乗り物に、小春はそわそわと膝を擦っていた。



「ねえねえ、どこいくの」


「小春ちゃんにとっては、つまんないところかもなあ」


1人吊革に掴まる三浦が眉を下げると、小春は口を尖らせた。



「こはる、たのしいとこじゃないといやだよ」


「そうか、困ったなあ」


困ったと言う割に焦った様子は見られない。


妹が居ると聞いていたので、きっと面倒見の良い兄なのだろう、榛名は関心を寄せていた。


そこで三浦が向き直る。榛名の背筋は自然と伸びた。



「実はじいちゃん昨日から熱出してたんだけど」


高齢者は熱が出ただけでも身体に相当な負担がかかるはずだ。


眉を潜める榛名に、三浦は続けた。



「昨日の朝、病院に付き添って行ったんだ。遅刻して出かける頃にはいびきかいてたよ」


「なんだかんだ無理してんだよな」と彼は独り言のように付け足した。


< 61 / 136 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop