ささくれとレモネード
行き先はホームセンターが並列するショッピングモールだった。
おじいさんに頼まれたものは野菜や果実の種、それから道具など庭いじりに必要なものばかりだった。
食料品も加えた荷物の重さを予測していた三浦は、当初瞬に付き添いを頼んだと言っていたので、なるほどと榛名は頷いた。
手元にある幾つもの野菜の種と、預かったメモと見比べながら彼は呟いた。
「悪かったな、連れ出して」
小春が振り回す手をしっかりと繋ぎながら、榛名は首を振った。
「楽しいよ」
不意にその横顔は、ちらりとも視線を移さずに息を漏らした。
「北村もお世辞が言えるんだな」
冗談めいた言い種はやけに小さく響いたので、むきになって声を張ってみせた。
「そうじゃなくて、本当に、楽しいの」
そう言うと、ようやく三浦が振り返る。まじまじと真意を探るように真っ直ぐ見つめられた。
堪えきれない榛名は慌てて一つ、手元の小袋を取ると、小春の目線までそれを降ろしてやった。
「小春。いつも食べてるお野菜はこうやって種から出来るの。知ってた?」
「これがきゅうりさんになるの?すごいね」
大きな二重を瞬かせて驚く妹がいつも見た顔にそっくりだと、三浦は姉妹の頭上で小さく笑った。