ささくれとレモネード



ホームセンターを後にすると、隣のショッピングモールへ足を運んだ。目当ては食料品だ。


おじいさんに頼まれたものは全て三浦が担ぎ、榛名は左に小春を連れ、かごを右手に持った。


あれやこれやと調味料をかごに入れる、その手つきに迷いは無かった。



「三浦くんも料理するの」


「ああ。簡単なものぐらいだけど」


そうこぼしながらも、彼はインスタント食品をほとんど手に取らなかった。




隙間が空いた瞬間にとりとめのない会話をぽつりぽつりとする。短い掛け合いが心地良い。


なんてことないものだ。けれども、いつもの抑揚のない話し方にも穏やかな音を纏って聴こえるような、そんな特別感があったのだ。


いつもとは違った雰囲気に気を取られていると、小春はかごに好きなお菓子を紛れ込ませていた。


気づいたのはレジでの支払いの際だ。


気づかなかったと微笑む三浦に、榛名は謝った。



「ちゃっかりしてるな」


「お母さんの遺伝要素が強いのかも」


「俺の妹もそうだよ」


「末っ子の特権だものね。おねだりできるのって」


「ああ。でも今はすっかり可愛げがなくなっちまったんだよな。あれじゃあ"おねだり"じゃなくて"ぼったくり"だ」


肩をすくめて苦い表情をする横顔に、榛名は、彼が思い浮かべているであろうその人の想像を重ねた。


兄に似ているとすれば、目鼻立ちはすっきりとしていて、さぞかし聡明な顔つきなのだろう。


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