ささくれとレモネード
「あれ。誰と一緒にやるの、実行祭委員」
榛名は卵焼きを咀嚼している最中だったので、彩花に目線を配った。
目線で促された彩花が、代わりに答える。
「上野くん。陸上部の」
「あいつ、委員だからって言ってもきっと、選抜リレーに駆り出されるよな」
クラス対抗選抜リレーは、体育祭の目玉だ。
球技で力を使い果たした身体に鞭を打つように休憩を挟んだ午後一番に行われるのだ。
「陸上部所属の代表は二人までって決まってるし、一人でも居たらお願いしてるものね」
彩花のそれに、榛名は頷いて顔を上げた。
と、そこで目の前の人物と目が合う。
三浦だ。すかさず、榛名は目をそらした。
まあ何にせよ、と言いかけて、瞬が二個目の惣菜パンの包装を破った。
「気さくな奴だから、充分に頼っていいと思うよ。なんなら全部任せるくらいの勢いでさ」
そう言って笑う顔は、いたずら好きな大型犬を彷彿とさせた。
ちなみに彼は早弁なるものを毎日しているにも関わらず、今日も今日とて、変わらずけろっとしている。
胃袋の強さに感心しながら、榛名はもう一度頷いた。