ささくれとレモネード
翌日の放課後、体育祭実行委員の集まりが開かれた。
三年生の教室で、榛名は上野と肩を並べて座った。
上野は顔が広く、先輩にも後輩にも頻繁に話し掛けられていた。
快活に冗談を交わし、背中を思いっきり叩かれても、けらけらと笑っている。
(これが男子のノリってやつか、)
痛そうな音にびくついた榛名は、隣での賑やかな光景から目を背けた。
部活動には所属しておらず、何しろ高校入学を期に引っ越してきた榛名には、知り合いが少なかった。
だからこういう集まりが、とにかく苦手なのだ。
知った者同士でわいわいと騒ぎ出し、そこに入る隙間などない。
取り残されたように一人で黙っていると、思い出すのはいつも嫌な出来事だ。
それは、中学生の頃の出来事。
どうしてこんな時にと、浮かんでくる残像を掻き消すように俯いた。
幻聴が大きくなり、本当は耳を塞いでしまいたい。
榛名は堪らず目を瞑った。
その時だった、目の前が暗く翳ったのは。
「居眠りすんなよ、もうすぐ始まるぞ」