ささくれとレモネード
これから何度か行われる集会の日程と、次回までにクラスで決定してくる内容を確認すると、所要時間15分ほどで委員会は終了した。
榛名はそそくさと席を立って教室を後にする。
詰まりそうだった息を一気に吐き出したところで名前を呼ばれた。
振り返ると、三浦が軽やかに階段を掛け降りてきた。
「俺、今日バイトだからさ。途中まで道一緒だろ、だから、」
三浦がそう言い掛けたのを遮ったのは、驚くほど大きな声だった。
「三浦!」
踊り場で二人同時に振り返ると、階上にいたのは上野だった。
よっぽど急いでいたのか、陸上部所属の彼の肩が上がるほど息を切らしていた。
そうしてこちらに向かってくるその表情は、少なくとも教室では目にしたことがない位に、険しいものだった。
三浦は口を真一文字に結んで、迫ってくる彼をじっと見つめた。
何かを悟っているような、そんな目付きだ。
それに怯んだのかぴくりと上野の眉が動いた。
瞬間を見逃さなかったのは、榛名だけではなかった。
「なんだよ」
動揺の表れを目にした三浦が、すかさず口を開いた。
恐ろしく落ち着いた声色。
上野の掌に力が籠った。
「お前、どういうつもり」