ささくれとレモネード
震えている声に榛名は身を縮めた。
隠しきれない憤怒が身体中から滲み出ていたのだ。
「お前、この前走ってたよな」
「ああ」
「ーーどういう風の吹き回しなんだ」
「言う必要があるか?」
容赦ない応答に、ぷつりと糸が切れるような音がした。
かっと見開かれた瞳孔が榛名の目に焼き付く。
身動きの取れない榛名を、三浦は背に隠した。
その瞬間、強い衝撃が頭を打つ。
三浦の体勢が後方に崩れた。
辛うじて榛名が背中を支えていたが、三浦の胸ぐらを掴んだ上野の力は強かった。
一寸後ろには掲示板があり、気を抜けば押し潰されてしまいそうなほどの距離を、三浦が何とか守っている。
「お前ーー自分がどれだけのことをしたのか分かってんのかよ!」
響いた怒号。
恐らく今の彼には三浦しか見えていないのだろう、榛名は息を飲んだ。