ささくれとレモネード



体育の授業においても、ましてや屋内でのアクティビティでも、三浦は姿を現さなかった。


けれども彼を見つけ出したとしてどんな顔でどんな言葉を掛ければよいのか、どれだけ考えても答えは出ない。



榛名は、自分の心をちくちくと刺している小骨に、見て見ぬふりをした。


三浦と知り合う以前の自分に戻ったのだ。それでいいじゃないか、と。




「北村さん」


すれ違い様に声を掛けるか掛けまいか躊躇った末、彼が榛名の名前を呼んだのは、木曜のことだった。



「上野くん」


振り返ると、上野はきまり悪そうな顔をしていた。



「ちょっといいかな」







すっかり人気のない教室で、ジャージ姿の上野が窓枠に背を預ける。


裾は膝下まで捲られていて、美しく締まった筋肉が打ち込んでいるものへの熱量を物語っていた。



なかなか話を切り出さないのを見兼ねた榛名は、自分の席へと腰掛けて口をついた。



「仲直り、したの?」


わざと、幼稚な振りをして訊いた。


誰、などと名前を出さずとも分かったのか、上野は目を見開く。


それでも榛名は口角を上げていた。


それは、事の重さを知らず”やんちゃ盛りの喧嘩だったのでしょう”と、あえて問うているような笑顔だった。


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