ささくれとレモネード



俺や笑里にとって、最低の父親であるということには間違いなかった。


この世にはもういない、ということを改めて自覚した時、憎しみを通り越して不思議と何も感じられなかった。


翌朝に目が覚めれば、いつも通り母が居て、『おはよう』と言った。


目を擦りながらも、変わらない日常に、母と笑里が居るという日常にほっとした。


それだけだった。



じいちゃんは結果的に、自分の娘を自動返却されたのだ、それもろくでもない男に一番望んでいない結末で。


後ろめたさを感じているのだろうーーふとしたきっかけがあれば、母との間にあるぎこちなさというのも解消できそうなのだけれど。


それも一筋縄でいかないのは、おそらくもうひとつ、ある事件が起因していた。


そしてそれは、俺自身も例外ではなかった。






笑里はここ数年で本当に成長したな、と思う。


身長もそうだが、精神的にもそうだ。周りの空気というものに敏感になってきた。


じいちゃんが夕食の準備をし出したので俺も立ち上がると、後ろから背中を叩かれた。



「あたし、手伝うから。瑛人はいいよ」


妙に大人びた口調で、この前の電話口で話していた人物と同じだろうかと、俺は首を捻った。


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