ささくれとレモネード
元々中性的だと言われていたので、髪を伸ばすと、ますます性別を間違えられるような風貌だったそうだ。
転校生だということも相まって、俺はいじめの標的となった。
いじめと言われても、現在のような陰湿なものではなく、ガキ大将とその手下たちに弄られるといったものだ。
まるで相手にしなかったことに、気の強いガキ大将が腹を立てたのだ。
掃除の間にランドセルを持っていかれて、下駄箱に張り紙してあったへろへろの字が示す場所へと向かった。
その辺りでは一番大きな公園だった。
前日のどしゃ降りのせいで、あちこちに水溜まりができている。
ガキ大将は手下二人を連れてランドセルを振り回していた。
やろうとしていることに想像がついて呆れた俺は、それはそれは呆れた顔をしていたと思う。
焦ったガキ大将が口を出す。
『余裕な顔しやがって。本当にやっちまうんだからな!』
三人がかりでやいのやいのと騒ぎ出したところに、俺は黙って近付いていった。
無言の圧力というのはどうやら凄まじいようで、半ばハッタリなんてことはお構い無しに、彼らは後退りした。
『な、なんだよ。気味悪いな!』
余程怖じ気づいてしまったのか、振り回していたそれをすかさず手放してしまった。
勢い良く俺に目掛けて飛んでくるランドセル。
しまった、と思った時には庇った肘に直撃した。