雨音に隠した残酷


大垣くんがどれだけお姉ちゃんを好きだったとしても、それで笑えるなら、幸せだと思ってくれているのなら。
わたしの気持ちに気付いてもらえなくても、別にそんなの、良かった。

だって、大垣くんの笑った顔が何よりもが好きだったから……。


でも大垣くんは今、つらい思いをしてこんなにも悲しんでいる。

そんなの、嫌だよ。
だったらいっそ、わたしにもその悲しみを分かち合わせて。

ひとりで全部を、抱え込もうとしないでよ……。


頬に温かい雫が流れ始める。
冷たくないそれはわたしが大垣くんを思う気持ちで、雨粒よりも大きな粒となって何度も生み出される。

顔に降り注ぐ雨よりも主張しているそれに、大垣くんも気付いたらしい。驚いたように瞳を丸くして言った。


「……何で、美希が泣くんだよ」

「だ、だってっ……」


理由なんて、わからない。
ただ、大垣くんの気持ちを考えると、自然と流れるのだから。


泣き顔を見られるのが恥ずかしくて、隠すように慌てて手のひらで顔を拭う。

それでも雨のせいもあって顔は濡れたままのわたしを見て、大垣くんがふっと息を漏らした。

まだ悲しそうだったけど、やっと微かに笑みを向けてくれた瞬間だった。


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