雨音に隠した残酷
あまり人が寄り付かないこの屋上が二人の特別な場所だったみたいで、屋上によくサボり来ていたわたしは何度か遭遇してしまったことがある。
ときには二人が楽しそうに話しているのを見かけたり、キスしているところも見てしまった。
そのときすでにお姉ちゃんは、旦那さんになった人と婚約していて。お姉ちゃんが大垣くんと浮気をしていることは明らかだった。
『大垣くんとは結婚前にちゃんと別れるし、婚約者がいることもちゃんと言う。だから浮気だってことは、まだ大垣くんには内緒にしておいて』
でもそれをお姉ちゃんに問い詰めたら、そう言いきられてしまって。
大垣くんだけが何も知らないことまで、そのときに同時に知ってしまった。
お姉ちゃんのその言葉を聞くべきなのはわたしではなく、大垣くんだったというのに。
『大垣くん、お姉ちゃんとは早く別れた方がいいよ』
『なんで? それは相手が先生だから?』
『それもそうだけど……。とにかく、あの女はやめておいた方がいいよ。大垣くんが傷付くだけだから』
口止めされてしまったけど、どうしてもお姉ちゃんのことは許せなかった。
大垣くんだけが傷付くなんて許せなくて……。だから、遠回しに別れることを何度も勧めた。
でもわたしの言葉では、ちっとも大垣くんの心を動かすことが出来なかった。
そしてそのまま、お姉ちゃんはあっさりと結婚してしまった。
しかも大垣くんに真実を告げることなく、最低で最悪な方法を選択して。