*Promise*~約束~【完】
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「懐かしいなー、誕生日パーティーも」
「ライナット様のあんなに嬉しそうな顔は初めて見たわ」
「リオも、すっかり元気になって良かったよね。無理してるようだったけど、あの後は戻ったし……いや、それ以上になってたかもね」
「やっぱり、人間は凄いわね。あっという間に成長しちゃうもの。ルゥはいつになったら変わるのかしら?」
「ちょっと、それどういう意味さ?」
ふふふ、とエリーゼが笑って誤魔化せばルゥは面白くなさそうに前を向いた。
しかし、彼の口元はおかしそうに歪んでいた。こうやって冗談を言い合うのも悪くはない。
そんな二人に、ガイルは釘を刺すように忠告した。本当は、こんなことは言いたくないのに。
「明日が山場だぞ。気を引き締めろ」
「……サーカスの公演であいつらがどう出るのかはわからないけど、俺たちは護るだけだよ」
「そうよ。リオは人が多いところにいて平気だから、私たちはライナット様を護らないとリオに会わせる顔がないわ」
エリーゼが力の籠った目でガイルを見れば、彼はそれを受けて頷いた。
確かにセイレーンの保護は大切な任務だが、もしバラモンの思惑で事が進んでいるのだとしたら……
混乱に乗じてライナットを狙ってくるかもしれない。
リオは天使に任せ、自分達は護りたい人の側を片時も離れたくない。不安定なのに危ない綱渡りをしている、孤独な彼を。
そんな彼を下で待ち構える人、応援する人、前から手を差しのべる人。
彼に過保護な人が、ここにはたくさんいる。
「それで、ライナット様は一体何をしてるのかしら」
「さあ?」
エリーゼの脈のない質問にルゥはこれまた脈のない返事をした。
確かに、気になる。
僅かに後ろを振り返りながら、ガイルは鋭い目付きで元来た道を見つめていた。
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「リオが……あそこに……」
『どうすんだおまえ?会いに行くのか?』
「そうしたいのは山々だが、部下の要望には答えないとな」
『んだよつまんねぇな。それでも男か?』
「言うことを聞かない我が儘な男もどうかと思うが」
『だから、つまんねぇっつってんの。真面目か』
「悪かったな」
ライナットは一見独り言をしているように思えるが、彼はちゃんと頭の中で会話をしていた。
リオのことを聞いて肝が据わったのか、悪魔ときちんと会話をしていて、悪魔は面白くなさそうに答えている。
自分の欲望を抑えられる人ほど、つまらないものはない。
『あーあー、残念だよ。おまえはもっとマシなやつかと思ってたのによ』
「マシってなんだよ」
『もっと欲望のままに行動できるやつ』
「そんなことをしていたら俺に部下はいない。愛想をつかされて殺されていただろう」
『まあ、精々頑張れよ。俺はしばらく休むことにするぜ』
「休む?」
『後々わかることさ』
僅かに笑いを含みながら声が言うと、すっと肩の荷が降りた。しかし、以前までと違うのは頭痛がしないこと。
ライナットは妙にスッキリとした頭で窓の外を見た。そこはちょうど広場が見えるところで、サーカスのテントが見える。しかし居住用のテントまでは見えなかった。
もどかしさを感じつつ、ライナットはリオとの再会に想いを膨らませた。
右手にある指輪を無意識に弄りながら……