*Promise*~約束~【完】


そもそも、バラモンの起源をご存知ですか?

あ、ご存知ありませんか。ではまずそこからですね。


バラモンの始まりはそう遅くもありません。ざっと、百年ぐらいの歴史になります。そうですか、それはご存知でしたか。

それで、なぜバラモンが誕生したかと言いますと、悪魔が好き放題してしまうのを怖れた当時の魔王が人間に力を与えたのが始まりでした。

はい、悪魔の行く末を畏怖した当時の魔王は人間に悪魔から身を護る術をお与えになられたのです。なんともご賢明な判断ですよね。バラモンがいなければ、今頃悪魔は人間界を支配していたかもしれません。

いえいえ、決して天使が弱いということを言いたいのではありません。ですが、感じてますよね?

天使はその数も力も減少していると。

いずれは絶滅、あるいは純血の者がいなくなりかねない現状にあります。それを少しでも緩和できているのは、このバラモンが誕生した結果と言えますね。


ですが、私たち悪魔の思っていた通りにバラモンは発展しませんでした。ただ、悪魔の行動する許容範囲を狭ませただけでした。


その血を広めることもなく、民を護るわけでもなく、ただ籠ってこそこそと何かをやっている。

さらには国の政治までに勢力を伸ばし始め、実質あいつらの手に全てが収まってしまいました。占いという名の指図のせいで。

ですので、私たち悪魔はバラモンの勝手に目を瞑っていられなくなりました。人間界の頂点に立たせるために、力を与えているのではありませんから。


ええと、"儀式"のことですよね。


"儀式"とは、バラモンとなる人間の魂を半分奪い、魔界の炎で焼き、また戻すことです。

苦痛を伴いますが、それは一瞬のことで、痛みが引く頃には力を得ています。

魔界の炎とは、まあ、火山のマグマだと思っていただいて結構です。人間界のマグマよりも高温で、赤く、止まることなく流れる魔界の川。川はやがて魔界の深淵に流れ込み、またどこかから噴き出します。

その炎は長年魔界を循環しているため、"力"を含んでいます。その"力"が人間に作用すると、不思議なことに予知したり結界を張ったりと普通ではできないことが可能になりました。


そうなるのを知っていたのか、はたまた偶然なのかはわかりませんが、当時の魔王は人間に施し、見事成功し、それが今でも続いているという話です。

ですが、最近"儀式"の失敗が増えているのです。

バラモンは子供の時に"儀式"を受けるのですが、血が濃くなったことの反動なのでしょうか、"儀式"をしても"力"を得られない子供が現れたのです。


失敗した子供がどうなると思いますか?


あなたはよくご存知かと思いますよ?失敗した子供は街にゴミ同然に放り出され、生きても死んでも関係ない、という風に扱われます。

その結果、子供の罪人が増えたのです。

ええ、あなたが脱獄させていた未成年の子供たちの中には、バラモンの"儀式"で失敗してしまった者たちが混ざっているでしょう。


そして、幸か不幸か、失敗してしまった者は以前の記憶を無くしてしまうのです。ですので、バラモンだった、という事実は自ずと隠蔽されます。

エリーゼさんは違いますが、そう考えるとルゥくんはわかりませんね。


ということで、理解していただけましたか?


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