*Promise*~約束~【完】


「抱き締めてもいい?」

「返事する前からしないでよー!」

「でも振り払わないじゃん?」

「……返さないけどね」

「冷たいなあ……わかったよ、離れる離れる」



感極まったのか、ピーターは私にひしと抱き付いてきた。

でも、指輪をちらっと見てから離れてくれた。まあ、そうなるよね……



「ピーターが悩んでるのはさ、会う会わないじゃなくて、また会ってくれるかってことだよね。いざ会ってみて、次からは門前払いだったら悲しいよね」

「そうそう。おまえの顔は二度と見たくない、とか嫌だ」

「でも大丈夫。勇気を出してよ」

「やっぱり、リオって不思議だよね」

「ふ、不思議?」



私は何気ない一言に驚いた。

何が不自然なんだろう。そんなこと言われたことないのに。



「そう、不思議。人見知りしがちで目立たないし真面目そうなのに、いざ話してみるとしっかりしてるし面白いしそんなに真面目じゃないし」

「褒めてるの?貶してるの?」

「褒めてる褒めてる~。そんなリオに彼は惹かれたのかな」

「……さあねぇ。わからないな」

「喧嘩したのかはわからないけど、彼はリオが好きだと思うな」

「どうして?」

「リオの顔見てればわかるよ。彼のこと思い出して嫌な顔するときないもん。今だって優しい顔してる」



その言葉に私は頬が熱くなるのを感じた。

確かに、嫌な思い出なんてない。

まあ村を焼かれて恨んだけどそれは事故だったし、リリスに拐われたけどそれはライナットのせいじゃない。

それはもう、楽しい思い出で薄れてる。


また嫌なことがあれば楽しい思い出は塗り潰されちゃうかもしれないけど、そのときはそのときだ。



「まだ十七だっけ?僕よりも大人びて見えるよ」

「勘違いだよそんなの。まだまだ子供だよ」

「いやいや、十分可愛いって」

「か、かわっ……!」

「ごめん、おじさん酔ってきたかも。襲われる前に逃げて?」

「……お、おやすみなさい!明日も頑張ってね!」

「おやすみ~」



なんなのよもう!いきなりあんな顔しちゃって……あんな、あんな……


男の顔。


まだ心臓バクバクしてる。さっさと寝よ。


私は足音荒くその場を立ち去ったけど、ピーターにずっと見られてたなんて知らなかった。



「セイレーンか……普通の人間だったら、奪いとってたのにな。それに相手が相手だし、ガイル殿の邪魔はしちゃダメだよね」



ピーター、ごめん。例え目の前で告られてたとしても、私はブレない。


この指輪に誓ったから。


彼を、裏切らない。決して……



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