*Promise*~約束~【完】
その言葉に次々と合点がいき、頭の中が目まぐるしく回転しライナットは思わずよろけた。
しかし、片足でグッと堪え、その繋がっていく記憶に意識を預けた。
カタリナはあまり会ったことはないが、どこか違った。異質だった。リリスよりも心を読めなかった。
無表情で青白く、細い体躯。なのに強靭な光を宿した力強い目。昔はもっとふくよかだったらしいが、その面影はどこにもない。
ただ、何かに向かって突き進む、そんな目だった。
さらに、陛下とのツーショットも見たことがない。そもそも、陛下とはライナットは疎遠だった。いや、疎遠にさせられた?
北の塔に半ば軟禁状態。中枢のパレスへはほとんど行ったことがない。それは、リリスがいるから。だが、なぜリリスがそこまで恐ろしいんだ?中身はただのバカだ。頭が良いわけでもない。
恐ろしかったのは、リリス自体ではなかったような……なぜ?なぜここまで恐れる必要がある?なぜ逆らえないんだ?
どんどんと深くまで見ようとすれば、激しくなる耳鳴り。最初は蚊の飛ぶような小さなうざったい音だったのに、だんだんと大きくなって、息苦しくなって、ついには爆弾が破裂するような爆音になって……
「くっ……!」
「ライナット様?」
エリーゼがやっとライナットの異変に気付き始めたとき、彼の頭の奥深くで何かが弾けた。
ジャキッ、という音が耳に聞こえて。
実際にはそんな音はどこにも鳴っていなかったのだが、確かに彼の耳には聞こえた。
ジャキッ。
それは、何かを切るような音。ハサミで、何かを……
髪を。
「思い出した……」
「ライナット様?いかがいたしましたか?」
「髪だ」
「髪、ですか?」
「髪を切られた」