*Promise*~約束~【完】

合流



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「へえ!ライナットの部下なの?」

「そうよ。ルゥよりも後輩だけどね」

「でも、ルゥよりも使えるんだから!」

「ルゥなんてあたしたちより年下だし……年上の方がいいわよねー?」

「「ねー」」

「……そう、だね」



リオは苦笑いを浮かべた。薄々感じてはいたが、どうやら彼女たちは面食いらしい。


サーカスと別れてから城門にたどり着いたものの、人の気配がまったくなかった。リオがきょろきょろと見回していると、セナがひょいと城壁を越えて門を内側から開けてしまった。

ツェリとグロースもなに食わぬ顔で堂々と不法侵入するもんだから引き留めたのだが、三人はだいじょーぶだいじょーぶ、とへらっと笑ってリオを引っ張り込んだ。

セナが閉めた門は後ろで重そうな音を立てて閉まった。その直後、爆発音が聞こえてきて思わず身を縮めた。


すると、一番背の高いグロースは短い舌打ちをした後にあろうことかリオを軽々と背に背負った。

わわっ、とリオが首にしがみつけば、ぐえっとわざと声を出した。それにごめん!と勢いよく謝ればグロースは意地悪そうにクスクスと笑っていた。


……なんだ、冗談か。



「絶対に手、離すんじゃないわよ」

「そうしたら首をホントに絞めちゃうよ」

「ほら、行こうよグロース!なんか中ヤバそうなんだけど!」



セナが慎重に玄関の扉を開けてそっと顔を覗かせた後、こちらを振り向いてそう告げた。

それにグロースは頷くと、落ちないでよね、と言って走り出した。


……えええええええっ!


まさかおんぶされたまま走られるとは思っていなかったリオは、身体の揺れを覚悟して声にならない悲鳴を上げたが、それは取り越し苦労に終わった。

……まったく揺れない。



「凄い!揺れない!」

「当たり前でしょー?」

「なんでツェリが言うわけ?」

「だって、あたしの姐さんだもん!自慢したいに決まってんじゃん!」

「ちょっとー、ツェリだけの姐さんじゃないわよ?」

「やきもち焼くなんて、セナってば一途~」

「もう!からかわないでよ!」

「ほら二人とも前見て前!」

「あっぶない危ない……なんなのこの瓦礫は」

「城の中もメチャメチャね……迂回するわよ」

「「了解姐さん!」」



煙い廊下を走る三人はいつの間にか口元を布で覆っていた。リオは覆える物がないため、グロースの背中に顔を押し付けて埃を避ける。

それにしても、なんでこんなことになっているんだ?爆弾がここまで来たとは考えにくい。



「それにしても、何が起こったのかしらね」

「さあ?」

「内乱でもあったんじゃない?王子の派閥とか」

「それなら死体の一つや二つは転がってるはずよ」

「血も飛び散ってないし……考えるほどワケわかんない」



急に生臭い話になってリオはぞわっと背中が冷たくなった。

今頃、街もメチャクチャになっているはずだ。いくらサーカス団が避難をさせているとはいえ、手が届かないところもあるはずだ。


少しだけぎゅっと抱き付く腕の力を強めれば、グロースが明るい声で言った。



「そう言えば、ライナット様って昔はどんな感じだったかしら」

「無愛想!」

「クール!」

「策略家!」

「一匹狼!」

「でも、最近は?」

「優しい!」

「カッコいい!」

「笑ってる!」

「あ、そうそう。笑うようになったよね」

「昔は笑ったって表面上っていうか、心からってわけでもなかったし」



その後も三人はいろいろと話していたが、リオにはまったく耳に入っていなかった。

ライナットの顔が浮かび、声が聞こえ、手の温もりが甦る。

そして、交わした口付け。指輪をもらったときの一回しかしていないが、それでも、鮮明に感触を今さらに思い出してしまい唇がなんだかスースーとした。


(会いたいなあ……)


今までその想いには蓋をしていたのに、ふとした拍子に隙間が開いてるしまったようだ。

そこから、スースーと寂しい風が吹き抜ける。


その穴はたぶん塞がらないんだろうな、とリオは自嘲気味に笑うしかなかった。


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