*Promise*~約束~【完】
処刑
~ディンside~
街に一歩踏み出せば、どこからともなく兵士が現れ俺を拘束した。手首には重厚な手錠が掛けられている。
槍を突き付けられながら前に進み、城の中の鉄格子の中へとぶちこまれる。
どうやら、偽物だとはバレていないらしい。
そのうち、偉そうな女が現れた。
「あなたはもうすぐ死ぬのよ」
とかなんとか俺に向かって言っているけど、この女はどうも好かない。確かに綺麗は綺麗なんだろうが、どこか嘘くさい。
あと、ライナットをよっぽど嫌ってるんだろうな、緩む口元が隠せないみたい。
確か、リリスとかってやつなのかな。前にルゥが言ってたような気がする。でも、操られていたという節があったが、どうやら違うようだ。
その女が消えると、今度は男が二人入ってきた。
しかし、俺の顔を見た瞬間安堵の表情を見せる。
「おまえ、ライナットじゃないよね?リリスもわからないなんてね」
「悪く言うな」
「でも、僕たちでも処刑は止められないんだ。民衆の怒りの矛先は全て君に向けられている。僕たちはライナットがあんなことしてないって知ってるけどどうにもできない……ああ、ここにいるのは次の王だよ。ライナットの兄。僕も兄だけど」
「あいつもこんな隠し玉を持っていたとはな。これからの復興のためにおまえには犠牲になってもらう」
「アレックス!そんな言い方……」
「いや、こいつの目を見ればわからないか?何かを決断し、何かを諦めたこの目を」
「……僕は望んでない」
彼はそう言うとさっさと出て行った。それに続いて王になる男も俺を一瞥した後いなくなった。
どうやら面会はこれで終わりらしい。あいつも恵まれてないな。三人しか会いに来ないとか。
まあ、俺も人のこと言えないけど。
仲間たちはどさくさに紛れていなくなったし、一番仲いいと思ってたナツも俺を置いて行った。
俺も逃げたんだけど、あいつの言葉に反応してこうなったし、ついてないな。
まあ、寝よ。
ーーーーー
ーーー
ー
ああ、眩しいな。
目を開けたら、無数の目がこっち見てた。
……首に縄が巻き付いてる。
指で解こうとしてもがっちりとしててダメだ。
そこまで頑張らない内に腕をだらけさせてみれば、俺を睨み付ける群衆。中には白い包帯が目立つ人もいた。
警備の兵士も腕を布でぶら下げているやつもいる。そりゃ、憎いよね。
……その時を告げる笛が吹かれた。
どんな処刑方法なのかと不謹慎ながらも観察していると、後ろから剣を突き付けられた。どうやら歩けってことらしい。
そして、なんか木製の舞台に立たされた。爪先にはぽっかりと空いた穴……きっと、ここに落ちて首吊りになるんだろうな。でも首吊りって汚いから下は観衆には見えないように暗幕が掛けられている。
いよいよかって思って空を見上げた。柱に縄がくくり付けられた。
太陽が眩しい。
目を細めてその光を目に焼き付けて前を向けば、群衆は黒い靄(もや)に包まれた。
光の残像が視界を覆い、人々の表情が全く見えない。
俺はその残像が消えない内に目を閉じようとしたけど、あれを目撃したからそのタイミングを失った。
たぶん、普段じゃあんなの見れなかった。今だからこそ、遠くのあの光景が見えたんだな。
俺を狙う一人の弓使い。
あいつは俺が前に突き出されたのに合わせて、その弦を揺るがせ俺の心臓を撃ち抜いた。
「リ……オ……」
靄の消えた瞼の裏には、リオのキラキラとした笑顔。眩しいけど、今度は逸らさない。おまえの残像をいつまでもこの目に焼き付けておきたかったな。
あいつと、"幸せ"になれよ。