*Promise*~約束~【完】
未来
~リオside~
ライナットとお父さんが二人で話をしている間、私は案内役のネルさんから話を聞いていた。
ネルさんは今までの経緯、お父さんがここにいるわけ、ここに棲んで大変だったことなどを快く話してくれた。
「開拓されていないこの島はまさに無人島で、虫はいるわ草は邪魔だわで面倒くさかったのよ」
最初はなかなか敬語が抜けなかったネルさんも、だんだんとどうでもよくなってきたのかいつの間にか抜けていた。
真面目な人だと思ってたけど、本当はこんなに話しやすい人だったんだってわかった。
「そこを木を倒して草を刈ってさら地を作り、家の骨組みを組み立て板を貼り、井戸を掘って汲み上げられるようにし、さらには港を作って漁に出られるようにして……寝ても寝ても疲れるし、かと言ってこの島から出て大陸に行くには時間が掛かるし……気がおかしくなりそうだった」
「でも、ならなかったんですね」
「ええ。村長が知恵を与えてくれて……この草は睡眠によく効くとか、食べられなさそうなキノコなんだけど、実は焼くと美味しいとか」
「……今のお父さんだったら見た目関係ないですもんね」
「目の前で焼いてむしゃむしゃ食べ始めるから、食べるのを止めようとしてた私たちもね、なんだかもっとやることがあるんじゃないかって思えて俄然やる気が出たわ」
「お父さん、そんなことしてたんだ……お腹壊しても知らないよ、私」
「半信半疑でビクビクしてた私たちもね、村長の恐れない様子に感化されて今じゃここら辺で知らない物はないぐらいよ」
「薬草とか、その効能とか?」
「魚の名前とか、それに毒があるかどうか、その処理方法とか……あなたのお父さんは一体何者なの?」
「さあ……私も知らない」
私はただ肩を竦めるしかなかった。
もしかしたら、私のお母さんたちもお父さんに影響されて色々とやっていたのかもしれない。
そう言えば、お母さんはガーデニングでハーブとか植えてたな。
ガーベラとか、ラベンダーとか、バジルとか……それが入ってるサラダを食べた後はなんだかスッキリとした感じがしたな。お母さん自体はあんまり覚えてないんだけどね。
「それで、私も村長みたいになりたいなと思ってね……」
「お父さんが好きなんですね」
「えっ、なっ、なっ、何言ってるの?!」
「そんなにキョドらなくてもいいですよ。お父さんが尊敬されてるのは娘としても鼻高々ですから」
赤くなったネルさんをクスクスと笑っていれば、ネルさんに呆れたような困ったような顔で私の肩をバシバシと叩かれた。
案外力強いなーとか思ってたら、中からライナットとお父さんが出て来るのがわかった。
ライナットの肩に手を置いて杖を突いて歩いてるお父さんの姿を見て、
あっ、仲良くなったんだな。
って、一目でわかったよ。
あとでライナットに何を話したの?って聞いたけど教えてくれなかった。
ただ、またお父さんは泣いたんだって思った。
だって、包帯がガビガビになってるんだもん。なんか作ってあげようかな?アイマスクとか?……って、それは寝るときだけか。
あとね、お父さんの素顔を未だに見られずにいるんだ。やっぱり怖いじゃん?
でも、ライナットは見たって言ってるんだ。いったい、見られない私って何だろう……ってライナットに言ったらね、
おまえは見なくていい。昔のお義父さんをずっと覚えていればそれでじゅうぶんだ。
って言うんだよ?それは一理あるけど、でもやっぱり娘なんだから父親のありのままの姿を受け入れるべきじゃない?いつまでも理想を追いかけてはいられないよね。
うーん、いつかその包帯を解いてもらおうとは思ってる。何年も先だと思うけど。