当て馬ならし
え?っと思って見上げると
さっきまでお天気だった空が
いつの間にか曇って
空気は急速に湿気を含みだす

強くなってきた風が
ドレスの裾を巻き上げると

ポツポツと滴が連続して、
「雨だ!」
と思った時には、
ザァーーという音が
濃い雨雲の下から聞こえ出す

慌てて辺りを見回すと
すこし先だけど
小さなガゼボがあった。

小さな六角形の屋根の東屋の上には、
風見鳥がくるくる回っている。

とにかくあそこまで走れば
雨は避けられるかもしれない
いまや少しずつ雨をすって
まとわりつくドレスの裾を持ち
駆け出した。

けれどガゼボまで半分と言うところで
雨脚に追いつかれて
あっという間に
ずぶぬれになってしまった。

思った以上に強い雨に
屋根を求めてとりあえず
ガゼボまでたどり着く。

髪もドレスも
たぶん下着までも水浸し

ふーっと息を吐いて呼吸を整え
振り返ると雨に煙って
庭が灰色の世界になっていた。
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