当て馬ならし
この空間にはあいつと私しかいない
確実に私にかけられてる声だろう
どう反応していいやら。
このまま聞こえなかったふりとか
しちゃおうかなぁ・・・

「ちっ・・っおいっ!」
面倒くさそうに舌打ちしてから、
こちらにしっかり声をかけてくる。

急に気配が近づいて
顔の横に黒い影が落ちる。

目線だけをそっと向けると
黒いローブが無造作に
差し出されている。

なに?
これで・・・雨を拭けってことか?
考えてみたらこの人、
口数は極端に少ないのかもしれない

書庫であった時も
必要最低限の言葉を
伝えてきた気がする。
だが・・・
今回は申し訳ないけど
わかりたくない・・・

というか、関わりたくない。

八つ当たりだったろうけど
乙女心は傷ついたのだ!

私はそれを押し返して
「結構です」
と言って立ち上がった。

もう、こうなったら
強行突破しかないと
雨の中に出ようとした途端

腕を掴まれて引き戻される
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